HOW COLD IS A STRAWBERRY?

副題:いちご(15)の温度                                          以前住んでいた東京の友人へ送るメールの形で、学校生活中心に日々を綴る15歳のブログ。現在、京都在住。    書き始めは標準語だが、いつの間にか京都弁に変わってしまう。                        父親が娘の生活をこっそり見る気分になれる感じ。今のところ、1,200文字。

バレンタインデー

 こっこ、元気?

今日はバレンタインデーだったね。どんな1日だった?本命チョコは渡した?

私は今年も友チョコだけ。50個も作ったよ。うちの学校は朝しかチョコを配る時間が無くて忙しかった。

先週学校の引け際、チョコが欲しけりゃアピールしろっ、て女子皆で冗談に言ってたんだけどね、朝着いてみたら”チョコください”て書いた画用紙を頭の上に掲げて、男子が廊下に正座してるではないか。これには笑った。

ずらっとだよ?モテ男〇〇君も加わりなりきってたから、一気にお祭りみたいな楽しい気分になった。

でもその後のショートホームルームで担任が突然”放課後は営業(?)禁止”とか言うから、ここで女子いきなり焦る。それから皆トートバッグにぱんぱんのチョコを抱えて、一斉に廊下や階段を走り回ることに。

で、友達とすれ違いざま”そこ待った!”とか言って渡そうとするんだけど、バッグの中がどんどん貰ったものとあげるものでごっちゃになってきてるわけだ。友達あてのが見つからない、と中をかき回しこれを一学年だけでも100人以上がやるもんだからそこらへん大渋滞。取り出してるうちこぼすわで大騒ぎ。

毎年このひと時は校舎全体が真夏並みの温度に上昇してると絶対思うな。楽しいんだけどね?

結局渡すつもりの子全員には会えなかったから、いくつかは家に持ち帰って食べた。

ママに報告しながらお茶を入れて貰って、しげしげと自分の作ったのと貰ったものを眺めてみればだな、今年はちょっと腕が上がった気がするよ。毎年数十個を段取り良く仕上げて、かれこれもう3年目だもんね。チョコを流し入れる器に敷いたフレークのバランスが丁度いいし、特にくちどけが良かった。

ひととおり出来栄えをチェックし終わったママが言うには、今年はガーナの板チョコを1枚ずつ配ってる人がいないって。そういえば去年は10個入りの箱を5つ入れた袋を下げてきて、しんどそうに登校してきた子がいたなぁ。ただでさえ教科書で荷物が10キロ近くあるというのに。

手間を省いたつもりで、結局しんどさが当日に回ったのに気付いてやめたわけね。ちょっと寂しい。

でもなあ、こうやって今年も袋いっぱいのチョコに軽いノリを楽しんだけど、甘酸っぱい思い出は作ってる過程にも当日にも全然発生しんかったわ。男子も皆広く集める方向に走ってるみたいで、30個ゲットとか言うだけやしな。

いやはや、こうやってにぎやかしてるのって、いつまで続くんやろう。というのも学年主任の先生がぽそっと言うたんや。”俺らの時代はもっと貰えない切なさが際立ってたぞ。暗かったぞ”って。その切実そうな話ぶりが良かったんよ。

てことは、本命がいない人はいないなりにもうちょっとホロ苦さを味わった方がええんかという気がして。懐かしそうに話す先生の目は、そうな風に言ってるように見えたんよなぁ。どうやろ、こっこ。